IFA査定マニュアル – 1/3 【導入編】マニュアルが必要な背景
IFAを直感だけで選ぶことのないよう、IFA査定マニュアルを考えてみた
金融商品購入のプロセスにIFAが加わった
かつて株式でもファンドなどの金融商品を購入するプロセスには大きく分けて2つの道筋があった。一つめの道筋は、営業マンにプッシュされて買うもの。100人の金融商品を購入する人がいるとすると95人は銀行や証券会社の営業マンが「オススメですよ」という営業トークに乗っかって金融商品を購入しているだろう。もう一つの筋道は、自分で自分で金融商品を調べ上げて買っている。多くの人は誰かに勧められたから、という理由で金融商品を購入しているのに対しリスクやリターンをきちんと調べた上で購入している人もいる。
ただ、自分でよく調べて購入する人も最初はその他大勢のように「誰かに勧められて」買っていたことだろう。
よく「投資は自己責任で」と商品パンフレットの裏に小さい字で書かれてあったりするが「オススメですよ」と営業マンに言われて買った人が大きく損をすることがある。自分で決め、自分で責任を受け入れるという意味での「自己責任」はこういう場合に嫌な匂いを発する。購入を決めてハンコを押したのは自分だがその判断のプロセスに大きく介入したのは営業マンじゃないか、と。これを自己責任の一言で片付けてしまうのはあまりにも無理があるのではないか… と。
そこで多くの個人投資家は金融市場から退場し、さらには金融機関を信用しなくなるのだがガッツのある人は「どうせ自己責任なら自分で調べて買ったほうが損しても腹落ちする」と手間ひまかけて自分で調べる道を選択するようになる。
しかし、これら2つの金融商品購入プロセスにIFAという新しい選択肢が登場するようになった。
IFAは金融機関から独立しているため特定の金融商品をオススメしなくてもよい。ポジショントーク的にはクライアント寄りの仕事をしていると言うこともできるがIFAを「自分のことを親身になって聞いてくれる、全く新しい存在」と拡大解釈するのは間違っている。IFAもボランティアではなくおカネを稼ぐことを動機としている以上、少なからず金融機関の営業マンと同じ側面はある。金融商品を販売するということはつまるところクライアントと販売側の情報格差を利用することになるからだ。
金融機関から独立していること、報酬体系が金融機関のそれと異なるため顧客との間で利益相反が「比較的」起こりにくいというだけで、IFA経由で金融商品を購入したからといって投資家の未来が、資産がかならずバラ色になるわけではないことは知っておくべきだろう。
とはいえアメリカでは投資信託は20%、生命保険の33%がIFAを通じて購入されるに至っており、IFA経由での金融商品の購入はメインストリームになりつつある。香港では体感的にはおそらくこの数字はさらに跳ね上がるだろう。
金融商品を選択する前に、IFAを選択するというプロセスが増えた
IFAも最終的にクライアントに金融商品を購入していただかねばならないので、投資家からみると「その金融商品が自分にふさわしいか」を検討する前に「そのIFAが自分にふさわしいか」を検討しなければいけないプロセスが一つ増えたことになる。
すなわちIFA経由で金融商品を購入するプロセスのスタート地点では、このIFAの見定めと金融商品の良し悪しのどちらも検討しなければならない。IFA経由で金融商品を購入するからといって、投資家は「自分で調べるの面倒なので全部おまかせします」という態度でいるべきではない。
平均的なIFAであったとしても回転売買で手数料稼ぎするという誘惑には勝てないだろうし、逆に優れたIFAであったとすればそもそもクライアントに「全部おまかせ」といった運用姿勢は望まない。人を信頼するという行為は一面では美しいが、こういった信頼はマーケットのボラティリティによっていとも簡単に打ち砕かれることはIFAで少しキャリアを積めば体感する。マーケットが揺れると結局イチから説明しイチから信頼関係を積んでいかねばならないことになり逆に遠回りなのだ。
最初は面倒でもきちんとこなしておくこと。その少しの面倒をこなしておけば、その後困らないばかりかIFAから最良のものを引き出せることにもなる。それはちょうど、オペラを最大限楽しむためにはストーリーはもちろん時代背景や当時の文化、歌い手のこれまでのキャリアなんかを知っておくといいのと似ている。ボーッと長時間座ってるだけではオペラを楽しめないばかりか、途中で退屈して帰りたくなる。
IFA選びに失敗しないために
IFA選びに失敗する、ということはそもそもどういうことか。具体的に例示したい。
- そもそもライセンスがなかった
- 商品を販売した直後から連絡が取りづらい
- 現在の市況について聞いても答えてくれない
弊社にもたびたびこのような相談が持ちかけられるが、まだ弊社でなんとかできる場合ともはや手の施しようがない場合がある。
IFA選びに失敗するということは、その後の金融商品の選択に失敗することにもつながる。だからこそIFAは金融商品を選択するとき以上に慎重に選ばなければならない。また他人にとって優れたIFAであったとしても自分にとっても同じく優れているとは限らない。
私どももIFAのはしくれとして「もしIFA経由で金融商品を購入するなら3人(社)くらいIFAを比較検討されると良いですよ」とアドバイスしている。比較検討した結果、弊社が選ばれることもあるし選ばれないこともあるが、比較検討しないで弊社を選んでくださる方に対しては「信頼して頂いて嬉しい」と思う反面、命の次に大事なおカネに関してはもう少し時間を割いても良いのではなかろうかとも思う。
直感でIFAを選ばないために
かくも大事なIFA選びではあるが、査定マニュアルがあるわけではない。ファンドであればインターネット上で比較ツールが充実しているし「商品選びの勘どころ」みたいなブログも充実しているのでそれらをザッピングしていればいずれ学習して検討できるようになる。
しかしIFA比較ツールがネットにないし、ネット拾いの情報でも「あそこは親切だったよ」「あそこはダメだった」みたいな主観的な評価ばかりでほとんど役にたたない。投資家は何を頼ってIFAを選択すればいいのか分からないのでいきおい「自分の直感」みたいなものを信じて突き進む。突き進んだ結果、ラッキーにも優れたIFAと出会うこともあれば、そうでない場合もある。
できるだけいいIFAに当たるよう打率を上げるためにはどうすればいいか。
これからIFAを選び、金融資産を増やしていこうとする方のためにテンプレートとなるようなマニュアルを提示したい。最終的にはIFA選びは「自分にフィットするかどうか」であるため書かれたことはあくまで必要最低限のテンプレートであり、それ以外はご自身で肉付けしていただくということになる。
IFA経由で金融商品を購入する場合、大きく分けて「IFAと会う前」「IFAに会うとき」「IFAに会った後」の3つの場面で考えたいと思う。