香港での口座開設、なぜ貯蓄目的ではダメなのか
香港に銀行口座を持ちたいという日本人の多くが陥る落とし穴。それは口座開設の目的を聞かれて「貯蓄」と答えること。近年より難しくなっている香港での口座開設。せっかく手に入れても使いこなせなければ意味がない。香港で口座を開設する前に、もう一度その必要性と目的を考えよう。
口座開設の目的に「貯蓄です!」はNG
香港に銀行口座を持ちたいという日本人の方はまだまだたくさんいらっしゃいます。口座開設に行って、まず、聞かれることって何だと思いますか?
口座開設のブースに入って、まず聞かれるのは、【口座開設の目的】です。放っておけば、日本人のほぼ全員は誇らしげに「貯蓄です!」と答えます。
しかし、その答えは・・残念ながら間違いです。ひとりひとりの目的は正解も不正解もありませんし、誰にもジャッジはできないはずなのになぜでしょう。
正確に言えば、「目的は貯蓄です!」は、銀行員的にはダメな回答であり、不正解。彼らが望んでいる答えではないということです。そして、その結果、「貯蓄です!」と答えた多くの人がここで門を閉じられてしまいます。まれにそのような答えをされた方の中でも、行員が納得するようなリーズナブルな答えをしっかりと伝えられた方が、次のステップに進むことができたということはありましたが、果たしてどれだけの方が英語で行員を納得させることができるでしょうか。少々ハードルが高いのではないでしょうか。結果、納得させることができなかったほとんどの日本から来た口座開設希望者は「貯蓄なら日本でお持ちの口座でやってください。ありがとうございました。さよなら~。」と、なんとも非情な仕打ちを受けます。
そして、今度は「なぜ貯蓄が目的ではダメなのですか!?」とこちらが矢面に立つことになります。皆さんの気持ちはすごくよくわかります。歴史背景からしても、民族的遺伝子レベルでみても、日本人は貯蓄が大好き。将来の備えとして貯蓄することを美徳し、将来の不安を貯蓄によって解消する。リスクを好まず、リスクを取らずに貯蓄を選ぶというのは、国民性といってもいいですよね。子供のころからお小遣いやお年玉を貯金すると言えば、褒められていたのに、貯蓄が目的といっただけで締め出されるなんて、信じがたいことが起こっていると思われても仕方のないことだとは思います。
しかしながら、銀行側の考えはこうです。香港の銀行は黙っていてもお金が集まってくるわけです。「私も預金させて!」「私も!」「俺も!」と世界各国から希望者が押し寄せてきます。そんな状況下で、後に問題が起こる可能性の高い、コミュニケーションが十分にとれないお客様に、わざわざお願いをして預金をしてもらう必要はないですよね。銀行が儲かる仕組みは世界の銀行で差異はなく、預金額が多ければ多いほど銀行はより多く儲けることもできるとも言えますが、その資金も税制の異なる国からの不正な資金であったら?などなど、リスクも背負うことになるわけです。現に脱税幇助の疑いで膨大なペナルティを支払わされた銀行だってあります。それも1回や2回ではないわけです。銀行にとっては手痛い損失です。銀行は妙な嫌疑をかけられた際の正当な理由が欲しいわけです。「この口座開設希望者はこの口座を通して、○○がしたいという強い目的を持って口座開設をした」といった具合にです。そして、あわよくばプラスアルファで、お客様がその口座を利用して株や債券、投資信託ファンドなどを売り買いしてもらったり、資金を送金したり受け取ったりとアクティブに活用してもらいたいわけです。
銀行の肩を持つわけではないですが、お金の置き場所をただ日本から香港に移動するためだけの理由なら、私もわざわざ海外の銀行口座を開いて資金を置いておく必要はないように思います。香港は日本から近いといっても、最低4時間はかかりますし、英語(もしくは中国語)での遠隔操作はたいへんです。
長い間放置すれば口座凍結も
もう一度、うかがいます。あなたは何の為に銀行口座が必要なのですか?
お友達が持っているから?それとも海外の口座を持っているというステータスのため?のちのち必要になる(といわれた)から?
使う目的がはっきりしていないのであれば、もう一度、よく考えたほうがよいかもしれません。知っていますか?香港の銀行口座は日本の口座と違って、メンテナンスが必要だということを。
口座内に資金を長い間放置しておけば凍結されてしまい、本人であっても動かすことができなくなってしまいます。長い間と言いましたが、1年というスパンでみて、ここ1年の間〔お金の動きがない=使っていない〕と判断→凍結、という例も多々あります。銀行に「私はこの口座を有効につかってますよ」とアピールし続けなければならないわけです。
とは言っても、私は皆さんが口座を持つことを反対している訳ではありません。インターネットバンキングを使いこなすことができれば、非常に便利で、個人レベルで様々なことをすることが可能です。特に投資に興味のある方であれば、使い道はどんどん広がっていくことでしょう。
投資も口座開設も、それをする確かな目的を持つということが一番大切です。目的を考える工程で浮かんできた疑問をひとつひとつ潰していくと、自分にとって本当に必要なもの、不必要なものが見えてくるはず。新しいものを始める際にそのもの自体を見極めるためにも、とても大事な初めの一歩になるのではないでしょうか。まずはしっかりとした目的を持って臨んで欲しいと思います。
日本人は香港の銀行とはHSBCだと思っていますから、そんな人が口座開設を目指す場合のマニュアルはこちら。