バイデンとxxx
バイデンといろいろ。
すでに報道されているとおり、新しいアメリカ大統領はバイデンになることがほぼ確実な情勢だ。もちろんトランプ大統領第二期という可能性はゼロではないにしても、バイデンが大統領になるとしたらどのような変化が起こるのかについてまとめてみたい。
バイデンと米金融市場
まずは証券市場はバイデン大統領の誕生を祝福した。というより、株式市場は不安定を嫌うので、トランプ・バイデンどちらが勝っても安定しさえすれば良かったのかもしれない。ただトランプが今後どれだけ強硬な主張をしてくるかどうか分からないのでそれに金融市場がイラつくことは考えられる。
またパウエル連銀議長は大統領関係なく続投するから低金利そしてインフレ・ターゲット政策には変更はない。
コロナ対策はもちろん金融市場にとっては重要で今後の補助金の多寡や中小企業への支援策によっては個人消費がブーストされ金融市場にとって良い影響を与える可能性は大きい。しかし中長期的にみて、私どもが興味をもっているのは以下のような政策だ。
- 税金の引き上げ
- 奨学金(借金)の一部肩代わり
- 炭素削減
増税
法人税増税については現行の21%から28%、キャピタルゲイン増税については累進で、年収USD1,000,000(およそ1億円)の所得のある人から利益の40%をとる。この新しい税制下によって米国全体で来年は1430億米ドル、2022年には3360億米ドルの税収が見込まれている。
法人税の増税は法人にとって自由に使えるお金が減ることを意味するので、株価的にはマイナスになる可能性もある。2017年にトランプが減税が行わて以降、その年は8%程度の上昇があった。それを考えると今回の増税で株価的には逆風になる可能性もある。ただし、実効税率で考えるとトランプ減税前には26%だったのがトランプ減税により18%となり、バイデン増税で21%となるのみだとするストラテジストもおり実際のインパクトは言葉のインパクトとは違ってないのかもしれない。
奨学金の一部免除
奨学金のUSD10,000を上限としての免除については、大きな福音だ。もちろん苦学生にとっても、卒業した人にとってもだが金融市場にとっても、だ。全米で平均してUSD28,400の学生ローンが存在し、毎月の支払いはUSD297にもなる。
Student Loan Calculator (2020) – Estimate Your Loan Repayment | SmartAsset.com
もし3分の1が棒引きされれば毎月1万円もの可処分所得が増えることになり、これが消費に向かう。金額的には大きくはないが、個々の選択肢(結婚したり、仕事の幅が広がったりすることには大きな価値があると思う。もっとも、無条件で棒引きされるわけではなくボランティアなどと引き換えではあるが。
炭素
「炭素ゼロ(排出と買取で差し引きゼロ)」という言葉が掛け声であってもちろんゼロにはならない。しかしトランプ政権が脱退したパリ協定をバイデンは復帰をしようとしているのと、省エネ関連事業で多額の投資をしようとしている。今のところ、上院で共和党は過半数を維持しそうな勢いなのでいわゆる「ねじれ議会」となりすべての政策をスムーズには通せないかもしれない。特に共和党は重厚長大産業への政策アプローチは嫌悪し、目先の経済対策を優先するので省エネ事業についてどう考えるかは先が見通せない。
しかし共和党にも民主党シンパがいるので上院の過半数というのはあまりアテにはならないかもしれない。クリーン・エネルギー関連株は長い間日の目を見なかったが、もしかするとバイデン特需があるかもしれない。
iShares Global Clean Energy ETF | ICLN
バイデンと中国
もはや「米中貿易戦争」が日常になってしまった。そもそも米中覇権争いが大統領が変わったからといってそんな簡単に決着するわけがない。
トランプは米vs中というわかりやすい構図で関税をかけ、取引を迫ってきた。しかしバイデンは中vs米国を含めた中国以外という構図で戦おうとしている。バイデンはもともと国際派であり、コソボ問題や中東政策で大きな役割を担ってきている。香港問題でも人権派に対して賛同の趣旨を示しており、人権や台湾などで揺さぶりをかけてくることは間違いない。またインドを西側に引き入れてアジア太平洋での中国のカウンターパワーを作ろうとするだろう。なので対中国政策にたいしては共和党と民主党とで大きな差があるとは思えず、あるとすればその方法、すなわち国際協調をしながら囲い込むことになるのではなかろうか。
ちなみに中国ハイテク企業については民主党と共和党が一致している。TikTok、華為など中国系企業に対してはトランプ政権時と同じような強硬的スタンスが続くと思われる。アメリカ主要市場に上場している中国企業の一覧はご丁寧にもアメリカ国家安全保障局が公開しているので、今後の米中関係を占いながら売買していただきたい。
技術分野での“中国排除”が加速する米国、大統領選を経てどうなる? | WIRED.jp
バイデンと香港
香港はバイデン当選に安堵している雰囲気はある。それは香港の民主派・反民主派両方ともにだ。特にアメリカ人コミュニティはトランプ政権の反中の一環として香港をダシに使われており、「アメリカの金融機関を香港から引き上げさせる」と脅されたりと板挟み状態となっていた。下積み時代もなくいきなり大統領になったトランプよりも、議員歴も長いバイデンのほうが、より冷静な外交を展開するだろうという期待はあるようだ。
周囲の香港人の声を拾っていると、他国の主義主張はどうでもいいのか「どっちが大統領でもいいよ」という論調が多い気がする。中国の大国化にともない日本も含め周辺国は急速に保守化しており、香港もその例外ではない。ただ他国よりも保守化傾向は弱く、自分たちの生活を脅かさないものであればどちらでもいいのだろう。
バイデンと…
書いてて思ったのだが、バイデン新大統領になったところで世の中そんなに変わらないのかも。