債券市場概観 – 2019年1月

先月の債券市場をざっくり概観。利上げ停止でジャンクボンドにまた脚光か。

香港は今日(2月5日)から旧正月に突入しました。

香港では1月1日はお休みではありますが、香港のお正月はまさにこの旧正月が本場でございます。この時期になると家族はもちろん親戚中の家をまわり新年の挨拶をし紅包(お年玉)を配ります。

ちなみにこちらのお年玉は日本のように「成人していない子供に配るもの」ではなく「独身男女に配るもの」そして「ふだんお世話になっている人に配るもの」となっています。独身/既婚で差別するなんて… と日本の一部の方からは大きな批判を浴びてしまいそうですが、実際の香港独身男女は「臨時お小遣いが入ってラッキー」くらいにしか思ってません。

特に女性の管理職割合が多い香港では男性依存の目線がなく、かといってわざとらしく女性性を排除してマッチョになる不自然さもなく、個人の自尊心が独身/既婚に脅かされない現状があります。「30前後の男女は結婚しているべきだ」という緩やかな社会的合意はあるものの、「それがどうした。自分は自分だ」と言い切ってしまえる強さ、しなやかさがあるのですね。

これはおそらく、香港人は根本的に他人に無関心だからかもしれません。誰がどこで何をしてようと、その人の勝手。隣の人が結婚してようがしてまいが興味はありません。みんな自分のことで忙しいから、他人に関心を割いているヒマはないのです。

日本から旅行に来られる方のうち、男性よりも女性のほうが香港にハマって年に何回も来られる方が多い気がします。日本は特に女性が生き辛い社会ですから、香港の無関心な空気を吸うとほっとしちゃうのかもしれませんね。

ちなみにAMGのボスは現在48歳ですが独身男性(未婚)ですので、既婚の若い従業員がボスにお年玉をあげ、ボスが両手で恭しくそれを受け取る、という微笑ましい光景が毎年繰り返されております。ちなみに金額ですが、20香港ドル(280円)から1,000香港ドル(14,000円)まで幅広くですね。

さて雑談はこれくらいにしまして本題に。

連銀が利上げストップ?

まさかの展開です。米連銀が今年の利上げを止めるかもしれないというニュースが先月末に報道されました。絶好調の決算、やや戻したものの完全雇用ともいえる失業率、それに伴う賃金上昇、2%前後の好ましいインフレ率と利上げを正当化するシグナルは揃っていたはずですが、明言はされていないものの「利上げを完了した」とも解釈できるニュアンスの文言が発表されています。

[Federal Reserve Board – Federal Reserve issues FOMC statement]
the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.
連銀は所期の目的(完全雇用や穏やかなインフレ)を達するよう将来の公定歩合を調整するにあたって慎重な姿勢で臨む

と同時に、別の声明ではバランスシート縮小へのアプローチをより柔軟にすると発表されています。

QE(量的緩和)の逆回転、QT(量的引き締め)の現在では引き締めすぎると景気が腰折れしてしまうことからQT停止すなわち引き締め停止のタイミングについて議論されていました。パウエル長官がカンファレンスで語ったところにによると引き締めは「規模は大きいままで、予定よりも早めに」中断すると言っています。これはすなわち全世界の景況感が悪化しつつあるなかでアメリカも将来的に景気の減速が避けられなくなる見通しをもったうえで「景気加熱を抑えるモード」から「見定めモード」に入ったことを意味します。

ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハイフェツは昨年暮れまで4回としていた利上げの回数を1回としました。弊社AMGでも今年数回の利上げを織り込んだポートフォリオを組んでいますから、今回の連銀の政策変更にともないポートフォリオを再考する必要に迫られています。

ジャンクボンドにまた脚光

連銀が利上げを当面の間停止するというニュースは資金繰りに行き詰まりそうになっていた破産寸前の会社にも一条の光をもたらしましています。昨年末まではとてもじゃないけど調達できなかった倒産すれすれの会社のジャンクボンドが急に投資家に売れるようになっています。またインデックスも昨年12月と比較して急激に上昇しており、昨年暮れの買い場を見逃した方にとっては悔しい展開となっています。

クローズド・アカウントで購入可能な債券本数

旧正月だからでしょうか? 先月から大増量、20本増えて現在

615

本がクローズド・アカウントにて購入可能です。購入可能な債券リストはこちら(Google Spredsheetに飛びます)。

ランキング

1. 値動きトップ 2. 値動きワースト 3. ハイイールド の3つのカテゴリーでのランキングです。ランキングの母体は上述のリストからです。以下、注意書きです。

  • 同じ会社で複数債券を発行している場合は、その中でもっとも良い(悪い)ものを1つだけ選んでいます(数字は11月30日時点のものです)
  • 値動きの計測期間は過去1ヶ月
  • オファープライスはお取引価格(債券価格と未確定クーポンを足したもの)
  • 格付けは特に断りがない限り発行体に付与されたものではなく債券ごとに付与された、S&Pのものを使用
  • 以下に出てくるような値動きが激しいものは、売買が成立しづらい(流動性がない)ものですから実際に投資を決定するにあたっては担当アドバイザーとよく相談してください
  • このランキングは購入できる債券が限られた「クローズドアカウント」内のものです。債券市場はこれよりもずっと広大ですから、リストにない債券で運用したい方はお問い合わせください

値動きトップ3本

この1ヶ月で債券価格が上昇したもの上位3本です。

上昇幅+24.4%, HONAIR 7.125% Perpetual Corp (USD)

香港航空を運営する会社、Blue Skyview Company Limitedの債券です。香港の航空会社では、ナショナルフラッグのキャセイも同じように苦しんでいるところであり乱高下する燃料価格、LCCとの競争など悩みは尽きないですね。最近香港航空にもキャセイにも乗る機会がありましたが、どちらも機内食のレベルがガクッと下がっていて少し食べただけで箸を置く乗客が少なからずおりました。「だったらLCCでいいや」となるとますます負のスパイラルですね。

オファープライスUSD151,973
格付けN.R(なし)
満期までのイールド(実質利回り)15.7 %
表面利回り7.375%
償還期限永久債

上昇幅+ 17.9 %, UNILIC 3.000% 19Sep2021 Corp (USD)

生命保険会社のユニオンライフの債券です。中国、北京に本社があるようですが財務状況などネットで出てきません。こういったものを買えるのは、おそらくインサイダーだけでしょうね。

オファープライスUSD182,445
格付けN.R(なし)
満期までのイールド(実質利回り)7.25%
表面利回り3.00%
償還期限2021年9月19日

上昇幅+15.46%, GDPOLY 8.250% 25Jan2020 Corp (USD)

中国のソーラー、風力発電の会社です。中国のエコ・エネルギー会社の苦境については何度もお伝えしてきました。8.25%の利回りは投資家には大変魅力に映るでしょうが、中国のデフォルトが増えている昨今なかなか買える代物ではないでしょう。市場をよくご覧になっている投資プロ向けですね。

オファープライスUSD178,462
格付けCCC
満期までのイールド(実質利回り)22.29%
表面利回り8.25%%
償還期限2020年1月25日

値動きワースト3本

この1ヶ月で債券価格が下落したもの上位3本です。前述のとおり、格付けの低い債券でも値上がりする傾向がありましたので下落率は昨月に比べてマイルドでしたね。

下落幅9.3%, THHTGP 7.875% 17Jan2021 Corp (USD)

香港の保険市場にさっそうと登場した旧大新生命、あらため泰禾人壽保險。香港にはマニュライフやAIA、プルデンシャルなど長い歴史を持つ保険会社が多数あり、香港人は安心感からそういった保険会社を選択するように思います。ですのでよほど魅力ある商品を出すか、あるいはコミッションを多く積んで保険ブローカーによりたくさん売ってもらうかしなければ生き残るのは難しいかもしれませんね。

オファープライスUSD150,427
格付けCCC+
満期までのイールド(実質利回り)24.95%
表面利回り7.875%
償還期限2021年1月17日

下落幅 -2.669%, HYDOO 12.000% 09May2020 Corp (USD)

中国のデベロッパ、 Hydoo International Holding Ltd(毅德國際控股有限公司)です。見てくださいこの表面利回り。12%。しかも来年償還です。借り換えができなければデフォルト扱いとなります。しかし値動きを見ているとそこまで買い叩かれてはいません。投資家は2020年まではギリギリ持つだろうと考えているのかもしれませんね。

オファープライスUSD195,195
格付けN.R(なし)
満期までのイールド(実質利回り)17.29%
表面利回り12.000%
償還期限2020年5月9日

下落幅-2.290%, HKCGAS 2.300% 17Jun2026 Corp (HKD)

香港のガス会社、香港中国ガスの債券です。値動きは少なかったですが、今回は全体的に上げ相場でしたのでこういった債券が紛れ込んできたのでしょう。満期が7-8年後でデフォルトの可能性が限りなく低いものについてはこれくらいの利回り(2-3%)しか得られないという理解しておきましょう。これ以上高い利回りですと、何らかのリスクを取っていると考えなければいけません。

オファープライスHKD 941,238.33
格付けN.R(なし)
満期までのイールド(実質利回り)3.242%
表面利回り2.3%
償還期限2026年6月27日

ハイイールド・トップ3本

満期までのイールド50.6%, CSSXF 7.950% 15Feb2019 Corp (USD)

満期目前! 中国のソーラーパネル会社です。取引もほとんどなく静かに満期を待っている状態ですね。

オファープライスUSD132,729
格付けN.R
満期までのイールド(実質利回り)50.6%
表面利回り7.950%
償還期限2019年2月15日

満期までのイールド19.1%, FNGHUI 7.875% 10Aug2019 Corp (USD)

中国のリース会社です。中国で一度でもビジネスを行ったことがある方なら消費者金融と同様、リース事業がいかに難しいかがおわかりになるかと思います。どこの国でも景気が悪くなれば借りたモノを返さない、借りて勝手に転売する、といったことが横行しますが、中国の場合その程度が半端ないようです。

オファープライスUSD167,875
格付けN.R
満期までのイールド19.1%
表面利回り7.875%
償還期限2019年8月10日

満期までのイールド36.3%, SDCOKI 7.250% 26Oct2020 Corp (USD)

満期までのイールドが36.3%となっておりますが、1年未満で満期が来るものは年利換算すると必然的に数字が高くなるので形式上の順位が入れ替わっております。こちらの債券もエコ・エネルギー系の会社です。中国政府としては増えすぎたエネルギー会社を吸収するつもりはなく、業界の淘汰が進むでしょう。

余談ですが、ここ香港でも中国のエネルギー会社関連の投資詐欺話が流行っています。ソーラー、風力への投資で儲けられる会社は今ほとんどないですから気をつけてくださいね。

オファープライスUSD138,184
格付けB-
満期までのイールド(実質利回り)36.3%
表面利回り7.250%
償還期限2020年10月26日

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