債券市場概観 – 2020年7月

先月の債券市場をざっくり振り返り。金利の低下に、金やビットコインの上昇が示すものとは。ハンセンテック指数の誕生も知っておきたい

アドバイザーの宮脇です。7月は同じくアドバイザーの小林と香港でも有名なハイキングコースである、ドラゴンズバック(香港島の南東側)に行く機会がありました。Facebookのチームアカウントに写真を掲載しています。ハイキングコースは道があるとはいえ、お年寄りだと厳しいかなという感じです。それでもどちらかといえば香港のハイキングコースとしては初級編だそうです。本当なのでしょうか、他のところにも行ってみたいと思います。

日差しが照りつけるなか、2時間半ほど歩き続け、ビーチにたどり着いてピザとビールで一息つきました。新型コロナでビーチは正式には閉鎖されているのですが、そこそこの人が海で泳いでおり、自然が豊かで近くにビーチもある香港の良さを再認識しました。もし香港でハイキングをしたい方がいれば是非お声がけください。

さて、本題の2020年7月債券市場概観をお届けします。

米国債利回りのさらなる低下

経済のV字回復見込みや米国債の発行増を受けて、米国債利回りは上昇するのでは、という声もありましたが、やはり感染の第2波に悩まされるなか、安全資産とされる米国債にも投資資金が流入し、利回りはますます低下する結果となっています。米10年国債利回りは0.6%近辺を推移しています。

米連邦準備銀行(FRB)の金融政策

7月はFRBの会合(FOMC)もありましたが、金利の据え置き、量的緩和の継続など、目立った発表はありませんでした。「当面は政策金利を上げるフェーズにはない」ことが確認されたものの、一部期待があった、フォワードガイダンスの変更や、中長期的な金融政策フレームワークの発表などはありませんでした。

1 米国のマイナス金利入りはあり得るか

正直なところ考えたくないシナリオの一つは米国のマイナス金利入りです。実際、パウエルFRB議長も明確に導入を否定しています。

ただし、金利スワップなどでは年内のマイナス金利導入を織り込む動きも見られており、金融市場による催促相場がやってくる可能性は十分にあります。中期ゾーンの金利が押し下げられ、逆イールドになるようなことがあれば、一つの景気シグナルとして受け止められる可能性があります。

2 マイナス金利導入のメリットは小さい

世界の基軸通貨である米ドルにおいてマイナス金利を導入することは、技術的なハードルの他に、実務的なデメリットも多いと考えられています。日本の投資家も利回りを求めて米ドル建ての投資をたくさんしていますので、金利があることは今の世界の資金フローの方向性を示していますが、金利がなくなると、次に資金が向かう先が不安定になる可能性はありますね。

3 米ドルは現在強くない

マイナス金利導入の最大の効果は、通貨の押し下げだと言われています。しかし、米ドルは足元各国主要通貨に対して、安くなっている現状があります。もちろん、マイナス金利導入に対する期待感がそうさせているのではという声もあります。

米ドルが強くないとはいえ、いつまでその状況が続くかは分かりません。米経済を阻害するほどに通貨高となったとき、為替介入をするよりは、手頃なマイナス金利導入に踏み切る可能性は出てくるのかもしれません。

日本国債の格付け見通し引き下げ

コロナショックの中で国債の格付けが下がった国はたくさんありますが、日本国債も見通しだけではありますが漏れなく下がりました。ただし、あくまで経済見通しの悪化の問題であり、国債の増発による財政の悪化などを理由にはしていないので、実際に格下げになるにはまだ余力がありそうです。

フィッチ、日本国債の格付け見通し、安定的から「ネガティブ」に変更 – Bloomberg

金価格の上昇

最近の金価格の上昇はめざましいものがあります。これまでの史上最高値を更新し、足元は1オンス=2,000ドル近辺で推移しています。これを受けて。ゴールドマン・サックスのコモディティ部門は1オンス=2,300ドルを予想する一方、富裕層部門は米ドルの地位は盤石であり金は高く評価されすぎていると言うなど、意見の分かれる結果となっています。

金相場、上昇継続の見通し強まる – ゴールドマンは2300ドル予想 – Bloomberg

米ドルの地位は揺るがず、金は不要 – MarketWatch

ビットコインの上昇

最近のビットコインの上昇も注目を浴びましたが、米ドルが弱いという状況はこれを後押ししているように思います。ただ、これがその他のリスク資産からの逃避行動からくるものなのか、あるいはリスク資産として選好されているのか、正直見分けがつきづらいところがあります。

株高・債券高は2020年初と同様の状況に近づきつつありますので、これから始める方に関してはより選別な投資を意識してもいいかもしれません。何かお力になれることがありましたら、ご連絡ください。

【余談】ハンセンテック指数の誕生

さて、香港から少し人々が目を離し始めた頃、香港の株式市場では、新たに「ハンセンテック指数」が7月27日に発表を開始しました。もともとハンセン指数自体は中国企業が多かったわけですが、ハンセンテック指数はその中でもテクノロジー分野のうち時価総額の大きい30社を厳選して指数化したものです。現在の構成銘柄は以下となっています。

  • アリババ
  • テンセント
  • 美団点評
  • シャオミ
  • 舜宇光学科技
  • SMIC
  • 阿里健康
  • JD.com
  • 金蝶国際ソフト
  • 平安健康医療科技
  • 瑞声科技
  • レノボグループ
  • キングソフト
  • ASMパシフィック
  • 閲文集団
  • ネットイース
  • 中興通訊
  • 衆安在線財産保険
  • BYD電子
  • 微盟集団
  • 同程芸龍
  • 新東方在線科技
  • 華虹半導体
  • 猫眼娯楽
  • 鴻騰六零八八精密科技
  • XD
  • 恒騰網絡
  • Qテクノロジー
  • ネットドラゴン
  • 易キン集団

まだ指数が発表されたばかりなので、実際にインデックス投資をするためにはETF(上場投資信託)が誕生するのを待たなければなりません。ETFの誕生もそう遠くない未来だとは思いますが、その間ただ待つというよりは他のETFで近似したポジションをとる、というのが現実的かと思います。米テックと合わせて中国テックもまた、コロナ下で頭角を現した分野ですので、動向には注目が集まりそうです。

QRコード https://amgwealth-jp.com/?p=4075

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