弊社なら10億円をどう運用するか – はじめに
弊社で口座を管理している資産10億円クラスの方たちの人となりと運用計画。始めに前提となる、こうした方々の発想についておさらい
小椋一人で2006年から、チーム全体としては2017年からこのBlogを不定期に更新している。このBlogにも一応アクセス解析を入れており「どの記事が多く読まれているのかな」とか「今月アクセスはどれくらいあったのかな」などをアクセス解析でときどきチェックするのは楽しみの一つだ。
また、アクセス解析ではどんなキーワードで検索されているのかもわかるためそのキーワードをもとにBlogの内容やPodcastのヒントにしている。Blogを書く、アクセスが多かった記事のキーワードを確認したりする、それをもとにまたBlogを書くという循環だ。
最近、とあるキーワードが頻繁に現れていることに気付いた。
ネットで検索する人は何かしら答えを求めている。この「10億円 運用 プライベートバンク」で検索している人はどんな答えを求めているのだろうか。
- 10億円の資産運用したいが、どんな選択肢があるのか知りたい
- プライベートバンクで10億円の資産運用をしたいが、他の人のポートフォリオはどんなものなのかを知りたい
- 自分は10億円を持っていないが、プライベートバンクで10億円を運用する人ってどんな方なのかを知りたい
- 自分は士業(税理士、弁護士など)なのだが資産家である顧問先から情報を提供するよう依頼されている
おそらくこんなところだろう。そこでこれらの答えになるべく網羅的に答えるべく、弊社AMGで口座を管理させていただいているクライアントのケース3つを、個人が特定されない程度に設定を変え、しかし本質的な部分はそのままに書いてみたいと思う。
10億円の資産運用をしたいが、どんな選択肢があるのか知る
プライベートバンク・サービスを提供している事業体は本家プライベートバンクはもちろんファミリーオフィス、そしてIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)と複数あり、弊社はIFAにカテゴライズされるが同様のサービスを提供している。最近では金融資産を扱わない不動産系の会社も富裕層向けサービスとしてプライベートバンク・サービスを標榜している。
プライベートバンク・サービスとは預金の預け入れや引き出し、送金といった単純な銀行サービスとは違ってクライアントのライフプランに沿った運用計画や財産承継、事業承継を検討する。ざっくりいうと富裕層にお金にまつわるあれこれの相談に乗るといったサービスである。たとえば「家業を息子に継がせたいので運用を絡めた事業承継プランを考えたい」とか「退職後に国外に移住するので税効果の高い運用プランを検討したい」とかいう質問だ。逆に「100万円をFXで増やしたい」とか「電子決済アプリはどれを使うと一番節約できるか」みたいな相談には乗ることはない。
その運用額と事業体については、こちらを参照していただきたい。基本的には運用額USD1,000,000からがプライベートバンク・サービスを受けることができる水準だといえるだろう。すなわち、IFA・プライベートバンク・ファミリーオフィスといった事業体がそれに該当する。
どれを選べばいいの? 運用だけならどこでも(ほぼ)一緒
プライベートバンク・サービスを提供している事業体をジャンル分けするのであれば外資系、邦銀系。銀行系、証券系。独立系となるだろう。ファミリーオフィスとIFAはその性質上独立系である。富裕層向けのサービスを提供していること自体はすでに珍しくない。
プライベートバンクを利用しようとする人はおそらく「どのプライベートバンクに預けるのが有利か」みたいなことを考えていると思う。しかしその答えは残念ながら「どこでもほぼ一緒」だと答えたい。
「プライベートバンクは金融技術の粋を集めてすごい運用をしてくれるところだ」みたいな都市伝説を信じてる方もいらっしゃるかもしれないが、残念ながらそれは都市伝説だ。どのプライベートバンクでもリスクレベルに応じて年利4-6%の提案をしてくる。
「では5%の提案をするプライベートバンクより6%の運用を提案するプライベートバンクのほうがすごいのではないか」と食い下がる方もいらっしゃるかもしれないが、あくまで過去の数字を参照して導き出す想定利回りが将来の利回りを保障するものではない。提案時に5%の利回りを提示するからといって将来かならず5%が保証されるわけではない。
昨今コンプライアンスの高まりでクライアントに無茶な運用をさせられなくなっている。クライアントがリスクを完全に理解しないまま運用をさせ大損させたとなると監督官庁から厳しい査察が入り最悪の場合業務停止や罰金を食うこともある。したがってどのプライベートバンクで株式、債権、ETFなどオーソドックスなポートフォリオを組むことになる。
運用以外の節税対策や相続対策で差
このように、資産運用だけ切り取って比較検討しても、おそらく金太郎飴だろう。なのでプライベートバンクは運用以外で比較するということになる。
弊社の場合、香港ベースということもあって香港法人それにともなう税制まわりの知見はあるし信託を絡めた資産運用や相続対策のための金額の大きい生命保険については得意とするところだ。一方でM&Aの仲介や不動産関係は苦手で、クライアントからそのような依頼があると他業者と連携することになる
メインバンクのプライベートバンクであれば事業相談にも乗ってもらえるだろうし、証券系のプライベートバンクであればM&AやIPOとセットで提案されるかもしれない。なので資産運用以外のところでプライベートバンクに何をして欲しいかがプライベートバンク選びのポイントになるだろう。
10億円を運用することは手段であって目的ではない
弊社AMGに運用の相談に来る富裕層の方は、単に「おカネを増やしたい、守りたい」という目的では来ない。おカネを増やし守ったその先にある何かを達成したいがために来られる。
すでに個人の幸せは達成しているので、家族が幸せになれるかどうか(たとえば事業承継や相続でモメないようにする、自分の死後でも生活水準を維持する)や、社会全体が幸せになれるかどうか(慈善事業などで社会貢献)を考えている。増やすことそのものよりも、増やすことによってどういう価値を達成したいのか、もっというとどういう世界を実現したいのかが先にあるわけだ。
経験のある担当でも、この富裕層がもつ繊細な部分を履き違えてクライアントに不快な思いをさせることがある。10億円を動かせる富裕層にとって、資産運用はマネーゲームなんかではなく何かを達成するための手段、道具にしかすぎない。
アドバイザー側にはそういった個人の究極の目的を聞き出すのは相当なコミュニケーションスキルが要求される。富裕層のほうでもたかだか2-3度会っただけでそんな個人的なことをペラペラ話し出したりはしない。なのでアドバイザーはクライアントの言動からそのクライアントが本当に何を考えているのか、考えていないのかを推測していかなければいけない。
長いお付き合いをするからこそ、嫌な奴を担当にすることだけは避けたい。資産運用の内容はともかくとしても、担当者との相性は非常に大きいものなのだ。あるクライアントは口座を開設する前、私どもとの面談の際に必ず本人以外の同席させ私どもアドバイザーの言動に矛盾や違和感がなかったかをあとで聞いていたそうだ。
では、次から具体的に弊社AMGで10億円をお預かりするときにどのような提案をしてきたかを3つのケースで書いていきたいと思う。