今、金融面で香港を避けて通るべきか否か

情報が少ないなかで、香港に関して情報を集め、意見を持つ人が増えたと感じる。政治を切り離し、金融面を考えるならば果たして避けて通るような道なのか

アドバイザーの宮脇です。昨年は夏からデモが過激化し、そして今年はコロナショック、さらには国安法と、香港を取り巻くニュースは決して良いものばかりではなかったですし、恒例行事のように香港にいらしていた方々すら渡航を自粛するケースも目立ちました。

あえてポジティブキャンペーンをするでも、ネガティブキャンペーンに同調するでもなく、香港のこの1年を見てきた私から、「今、金融面で香港を避けて通るべきか否か」という話をしてみたいと思います。

立場によって捉え方と取りうるアクションが異なるので大きく3パターンに分けてみます。

①香港で新しく取り組むことを検討している人

私自身、提供できるサービスが狭まったという実感があるか、という点でいうと、少なくとも現時点ではありません。むしろ個人的には1年かけて蓄積した経験の方が大きいので、提供できるものの幅は広がったと感じます。

強いて言うならば、利回りが良いことで知られていた香港保険に関して、ほんの僅かですが利回り低下が見られた商品があることは残念に思います。

しかし、依然として取り組む魅力のある商品がたくさんありますし、それを見つけてくるのが私の仕事なので、これも特に気になるほどではありません。

資産運用環境に目を移すと、2019年の状況は債券も株式も高くて、まさに“買うものがない”状態でしたので投資家の方とお話しするのが非常に難しかったです。

一方、2020年に入って金融市場が大きく動いたので、先行きの話も含め、たくさんの方とお話しをさせていただいており、「一人で悶々とするのでなく、話してみて良かった」と言っていただけたことはアドバイザー冥利に尽きる、と感じます。対面でお話しできないことはとても残念だとは思いつつ、そしてまた債券も株式も高くなる局面がくるのではということは率直に気になるところです。

サービスは変わらなくても、社会情勢が変わったし、今後劇的に変わるのでは、という指摘がここで返ってくると思います。達観しているように聞こえるかもしれませんが、政治はいつの世も不安と安定のゆりかごです。トランプ政権に代わる前と後の米国の政治は全然違いますし、日本も首相が短期間でコロコロ代わる時代がありましたよね。

とりわけ、金融制度が変わり得ることに社会がどのように反応するか、ということに関しては、私は2016年の国民投票後のイギリスに2年強滞在していましたので、肌で感じたつもりです。

当時はソフトブレクジットなのかハードブレクジットなのかなんて言って常に揺り動いていましたし、イギリスから金融機関をはじめとしてあらゆる企業が一斉に撤退をするのではないか、というくらいの恐怖感もありました。実際のところ、企業は「ある日突然ビジネスができなくなる可能性」も想定してあらゆるシナリオに対して備えねばなりませんでしたから、大陸側に拠点を作ったり、業を煮やして出ていった人たちもいるにはいます。ただそれは本当にブレクジットのせいだったのか、は正直分からない例もありました。また、蓋を開けてみてロンドンの金融都市としての力量が劇的に変わったかというとそうでもないだろうと考えます。もちろん、イギリスですらEUとの交渉事はいくつも残っているのでまだ分からない面はありますが。

香港の国際競争力のことだけを考えるのであれば、1年単位で変わる“可能性が常に残る”税制などの方が、企業にとってよほど日頃の心配の種なのではと個人的には思います。

「ローマは一日にしてならず」

それを思えば香港はまだまだ若いのでしょう。(少なくとも私から見て。)

②香港で既に行なった投資について考えている人

ご自身が香港に保有する(あるいはそう認識している)資産について、ふと思いを巡らせたとき、漠然と何か考えておいた方がいいのか、と思う人はいるでしょう。

資産のレポートがちゃんと見られるか、担当者と連絡がつくか、運用の状況はどのような感じか、など極めてベーシックなことも含めて洗い出しをしてみることはとても良いと思います。ひょっとしたらいつの間にか担当者がいなくなっていたり、専用サイトのログインページが変わっていたり、運用会社の名前が変わっていたりするかもしれません。機関投資家などが巨大な資金を動かす場合は、通常、こういった定期的なチェックをするものですが、個人投資家でそこまでマメな人はそんなに多くはありません。

ふと思い立ったのであれば、多分そのときが最良の機会であろうと思います。逆にその機会を逃せば、話すきっかけを失ってしまいそうですよね。

③香港から投資資金を引き揚げることを検討している人

まず始めに、ご自身の資産が何か得体の知れない力によって神隠しにでもあうのではないか、という印象を持っている方がいるとしたら、それはもう少し具体的に考えてみると落ち着く気がします。いや、そうでなくても渡航もままならない今、何かが、何かが起こったら困る、という不安感がある、としたらその気持ちは多分アドバイザーとして察するべきものだろうと思います。

また、学校の休校などが続いたことなどから、香港内で家族や生活の安心という部分が得られなかったとしたらこれもまたネガティブな印象として残ってしまっているのかもしれません。

実際、今の香港も感染症対策のために在宅ワークをしている人も多く、この点において金融面で従来通りの稼働状況であるとは言い難いです。ただ、株式市場も問題なく開いていますし、多くの企業が事前にこしらえた災害対策マニュアルなどに沿って営業も継続しています。その点はご安心いただきたいと思います。

ただ、それでも様々な事情から投資資金を引き揚げたいと思う、ということはあり得ます。あるいは企業として香港から撤退したいというケースもそうかもしれません。お客様の意志なので、これを阻む理由はもちろんありません。

恐らくそのケースにおいて大切なことは、あまり衝動的になりすぎず、”引き揚げるのにかかるコスト”や“引き揚げた後どうするのか”ということまでじっくり考えることです。時間をかけて考えるべきものもあり、決断は早い方がいいと思い切る前に、一息置いて是非ご相談いただきたいものです。

結局のところは

始めの問いである「今、金融面で香港を避けて通るべきか否か」に戻るならば、経済の心臓たる金融システムの方は特に何も変わっていないなかで、避けて通りたいと思うかどうかは最終的には“気持ち”の部分が大きいのだろうと推測できます。また、香港の課題を語るにあたって、どこかの国のトップかと見間違えるくらいにまで急ピッチで知見を深めようとされている方さえ見受けますが、きっとすごく疲れるのではないかと逆に心配したりはします。

お客様のこの”気持ち”にどれだけ寄り添えるか、というところが今はアドバイザーとしての私の最大の課題だと感じます。

ともあれ、新型コロナウィルスという難問をクリアしなければならないのは香港も同じです。お客様の経済状態や事業状態に合わせて話をするのがアドバイザーの仕事なので、お客様の方から私たちにコンタクトをしない方がいいタイミング、というのは少なくとも存在しないように思います。

当地にいる私たちだからこそできることもあるかもしれません。もしご相談がありましたら問い合わせフォームよりお願いいたします。

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