債券市場概観 – 2019年10月
先月の債券市場を振り返る。各国中央銀行の決定、米中貿易摩擦の緩和などを受けて債券利回りは上昇、株式市場も上昇へ。年末に向けての波乱には警戒が必要。
今回は定例の債券市場概観をお届けしたいと思います。
マーケットの材料は概ね予想通り消化
2019年10月はいくつかのマーケットイベントを控えてはいましたが、もともとそんなに大きな変化を予定していませんでしたので、実際、概ね予想通りの結果を確認できました念のため振り返っておきたいと思います。
年末にかけては今のところ節目となるようなイベントはなさそうではありますが、逆に言えばどなたも来年に向けての計画を落ち着いて考えるタイミングと言えますから、マーケット材料がない中での動きに注目をしておくと良いでしょう。
日銀はカタナを鞘に収めたまま
9月の日銀政策決定会合における政策判断保留があり、そして日本では消費税が実際に10%まで引き上げられました。ニュースを見る限り、消費税増税による大きな混乱は結果的にはなかった、ということでいいですかね。私自身日本に帰る機会がありましたので、スターバックスで「持ち帰り用のカップで、店内で飲む」と言ったらどうなるかを試してみたところ、問題なく10%が乗っかっていました。どちらかと言えば台風等の方が問題だったかもしれません。もしブログをお読みの方で、被害に遭われた方がいらっしゃいましたら、この場を借りてお見舞い申し上げます。私の知り合いも例の武蔵小杉のマンションに住んでいて本当に大変そうでしたから、平穏が戻ることを切に祈ります。
少し話を戻しますと、改めて10月に迎えた日銀政策決定会合は大きなサプライズはないままに通過しました。ただし、今後の政策金利は「現在の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定する」と明文化しましたので、マイナス金利をさらに引き下げる可能性を明記したことになります。今回の日銀は実際様々な決定ができるように下準備をした上で、「必要がなかったので大きな決定はしなかった」ということのように思います。米中貿易摩擦も少し落ち着きましたし、円高に過度に振れているタイミングでもなかったからです。
米国は利下げを打ち止めか
10月の米連邦準備銀行(FRB)の政策決定は、今年に入って3回目の0.25%の利下げとなりました。ただし今後については「適切に行動する」の文言がなくなったことで、さらなる利下げが行われる可能性は低くなったと市場では受け止められています。
長らく続いた米中貿易摩擦も、少しずつ前に進んでいるように(少なくともそう見える)報道が増えては来ましたので、一連の流れを受けて、米株式市場は再び史上最高値を更新している状況です。今後大きなインパクトがあるとすれば、トランプ大統領の弾劾の可能性ですね。こればっかりは明確に時期が決まっているわけでもないので備えるのは非常に難しいと感じます。
イギリスはEU離脱期限をさらに延長
Podcastでも触れましたが、ジョンソン首相のもとでの10月31日の英国EU離脱期限がまたしても延長されるに至りました。これを受け、英国は12月12日に総選挙を行って、マヒ状態にあった議会を解消することを目指すことになります。足元のビッグイシューがEU離脱であるだけに、「事実上の(再)国民投票」ということでしょうか。下院の3分の2の合意を得なければ、首相が解散権を行使できない規定を作ってしまったキャメロン元首相の遺産がここまで響くとは当時想定していたでしょうか。
改めて先月の債券市場を振り返る
米中貿易摩擦の緩和、FRB会合での決定を受けて、11月頭にかけて、米国の債券市場は金利上昇となっています。しばらく債券が買いづらいという局面が続いていましたが、今後、債券価格が非常に高い状態は多少改善してくるかもしれません。
長短金利の低水準での維持がさらにコミットされた日本の方は急な金利上昇はしませんでしたが、日経平均株価の上昇を見ながら少しずつプラス圏へ向かって上昇してきています。
一方、リスクセンチメントは改善したかに見えますが、金価格は実はまだ下がっていません。各国の中央銀行による買い、あるいは金ETFに対する資金流入が下値を支えているようです。
年末独特の波乱は警戒
改めて株式市場が上昇に向かい始めた感がありますから、年末に向けてはリスクオンの展開が続くといいですね。ただし、年末はしばしば金融市場はプラスにもマイナスにも波乱があります。特に材料が明確にない中での動きは”アノマリー”とも言われますから浮かれすぎないことも大事です。皆さんが安心して新しい年を迎えられるよう、長い目で見てポートフォリオを組んでいければと思っています。弊社AMGでのポートフォリオの変更が必要であろうと判断されるお客様には、各アドバイザーからご連絡をさせていただきます。